街を歩いていると、家々の玄関先にそれぞれの暮らしが滲み出ているのを感じる事があります。
例えば、季節の草花を丁寧に植えた鉢植え、小さなベンチ、手作りのリースや表札。
これらは、住人が意識的に玄関まわりを設え、住まいの顔として整えている「表出」のかたちです。それらは単に飾りというよりも、自分たちの生活や価値観、他者との関係性の在り方を建築に添えている行為とも捉えることができます。
玄関という半屋外の場は、ウチとソトをつなぐ領域として、住人の個性が表れやすく、そこに住む人がどんな時間を大切にしているのか、どんなふうに他者と関わりたいのかが窺えます。
一方、玄関先に積まれた段ボール、自転車、工具、古い家具。これらは建物に収まらないものが外に出された状態でこれを「あふれだし」といいます。
これらは決して設えたものではなく、収納しきれなかった生活の余剰が、やむを得ず外に現れた状態です。整ってはいませんが、そこには生活の現実が色濃く反映されています。誰かが暮らしているということの迫真性がむしろそこから感じ取られます。
「表出」が意識的な空間の演出だとすれば、「あふれだし」は生活の重みが自然と建築の外に滲み出た結果です。この二つの概念はどちらが良いか対立するものではなく、どちらも住まいと人との関係性の中で生まれてくる表情です。
建築は人に使われてこそ生きる。意図された美しさと、意図を超えた混沌。それらの間に建築の豊かさが潜んでいるのかも知れません。
KADeL 設計部S.S.
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