【マイナス設計論】建築家が教える「引き算の美学」で、一生を楽にする住まいづくり
皆さん、こんにちは。KADeLの黒瀬でございます。
今回は、私が個人的に設計において最も重要視している概念の一つ、「引き算の美学」に基づいたマイナス設計論についてお話しいたします。
注文住宅を検討する際、多くの方が「あれもこれも」と機能を追加したくなります。しかし、そこはグッと我慢が必要です。なぜなら、「付ける」という行為は、その瞬間に「イニシャルコスト(導入費)」「ランニングコスト(維持費)」「管理コスト(掃除の手間)」という3つの負債を抱えることと同義だからです。
今回は特に「住宅の外まわり」に焦点を当て、プロの視点から「本当にそれ、必要ですか?」と問い直したい5つの項目を挙げます。

1.カーポート・自転車置き場の後付け屋根
設置した当初は便利ですが、数年も経てば屋根の上の汚れが目立ち、家の外観を著しく損ないます。高い場所の掃除は困難を極め、デザインにこだわればコストは青天井です。
・現実的な代替案: 最近の車の塗装技術は進化しています。高額なカーポートを設置する予算があるなら、車本体に高品質なコーティングを施す方が、家も車も美しく保てます。雨の日に多少濡れる程度の不便は、掃除の手間とコストを天秤にかければ、許容すべき範囲です。
2.ベランダ(バルコニー)
実は、現代の住宅設計において最も「なくせる」場所です。莫大な施工費がかかるだけでなく、防水メンテナンス(FRP補修等)や、排水口の詰まりなど、将来的なリスクの塊です。
・現実的な代替案: 高性能な洗濯乾燥機と除菌洗剤があれば、外干しの必要性はほぼ消失しています。乾燥機にかけられない衣類は室内干しで十分。布団は布団乾燥機に任せる。これだけで、掃除のストレスと将来の補修費から解放されます。
3.太陽光発電
売電価格が低下し続けている今、安易な導入は禁物です。高額な導入費用に加え、パネルの汚れによる発電効率の低下、そして専門業者による定期清掃コストや 約10年ごとのユニットの交換費用がかかります。
・潜在的リスク: 太陽光を導入すると「自家発電しているから」と、かえって省エネ意識が希薄になり、電気を使いすぎてしまう心理的罠(モラルハザード)に陥りやすい。徹底した節約意識を持てない限り、本末転倒な結果を招きます。
4.蓄電池などの機械モノ
これも機械モノである以上、必ず寿命が来ます。10年程度でメンテナンスや丸ごと交換の費用が発生し、その額は決して安くありません。
・現実的な視点: 蓄電池に頼る前に、まずは生活そのものを見直し、電気代を抑える設計と工夫を優先すべきです。機械に頼る「足し算」の解決は、常に故障のリスクを伴います。
5.不要な「開閉窓」
多くの窓を「開くタイプ(引き違い等)」にしがちですが、これも掃除の手間を増やす元凶です。
・設計の最適解: 換気計画(風力・重力換気)に基づき、必要な箇所だけを開閉窓にし、それ以外は「FIX窓(はめ殺し窓)」に限定すべきです。FIX窓は気密性が高く、掃除の邪魔になるレールもありません。ただし、「外側から手が届くか」を考慮せずに配置すると、永遠に拭けない汚れが残るという致命的なミスに繋がります。
結論:家づくりは「楽」をするためにある
家を建て、引っ越した後に始まるのは、日々のリアルな生活です。その生活が「掃除とメンテナンスに追われる日々」であってはなりません。
あれもこれもと欲張るのではなく、「いかに何もしなくて済むか」を設計段階で徹底的に考えること。それが、のんびりと楽しく暮らすための、建築家からの提言です。
さて、ここまで偉そうに「引き算」を語ってきましたが、私自身の自宅はどうなのか。
結論から申し上げますと、我が家の外部に取り付けている設備機器は、「24号の給湯器」たった一つだけです。
太陽光パネルも、蓄電池も、カーポートもベランダもありません。これには明確な意図があります。
1.10年後の「負の遺産」を最小化する
あらゆる機械には寿命があります。10年も経てば、どんなに高価な設備も故障のリスクにさらされます。我が家で10年後に交換が必要になるのは、おそらく給湯器のみ。日々のメンテナンスコストは、文字通り「ゼロ」です。
多くの設備を盛り込むことは、「10年後の自分に多額の請求書を送りつける行為」に他なりません。私はそのリスクを、設計段階で徹底的に排除しました。
2.設備に頼らず「構造」で節約する
設備を減らす代わりに、私は「設計の工夫」で光熱費を抑えています。
例えば、給湯器からお風呂やキッチンまでの距離を「極限まで短く」設計すること。
・水道代の節約: お湯が出るまでのタイムラグ(捨て水)を最小限に抑える。
・ガス代の節約: 配管内での熱損失を防ぎ、効率よく給湯する。
一見、地味な工夫に見えるかもしれません。しかし、この数秒、数リットルの「小さな積み重ね」こそが、機械の故障に怯えることなく、永続的に続く本当の節約へと繋がるのです。
3.「足し算」ではなく「知恵」で豊かさを手に入れる
住宅ローンを抱えながら、さらに設備の維持費や掃除の手間に追われる生活。それは本当に豊かな暮らしでしょうか?
設計段階でどれだけ無駄を削ぎ落とし、本質的な構造に知恵を絞れるか。この「マイナスの積み重ね」こそが、結果として家計にゆとりを生み、心穏やかな「豊かな暮らし」を実現する唯一の道だと確信しています。
皆さんも、住宅会社から提案される「便利な設備」を鵜呑みにする前に、一度立ち止まって考えてみてください。その設備は、10年後のあなたを助けてくれますか?
次回は、住宅の「内側(室内)」における引き算の美学についてお話しします。無駄を削ぎ落とし、本質を研ぎ澄ませた住まいを一緒に考えていきましょう。
今回は 私なりの「削ぎ落とす贅沢:住まいの本質を極める『マイナス』設計論 / 引き算の美学①』をテーマにお話しました。
いかがだったでしょうか?
お家づくりの参考になりましたら幸いです
お付き合いいただき ありがとうございました。
次回もこのテーマにて お話しいたします。
建築ってほんとに良いものですね
それでは皆様 次回ブログでお会いしましょう!
KADeL 黒瀬信幸(副社長/建築家)
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