皆さんこんにちは建築設計事務所 KADeL黒瀬でございます
今回は 私なりに「和」と「環境共生」のお話しをしたいと思います
(奈良の慈光院を見学した時の写真)
和とは日本の空間操作法
真 行 草 の表現や 境界 結界など領域を連続して繋いでいく 興味深い設計手法があり 障子や格子 暖簾や 衝立などの柔らかい境界 地面に置かれた関守石(石ころ)などの繊細な境界
近代建築が着想を得たと言われる和の諸要素です
個人的には とても興味深く 設計時には日本の境界や空間操作法はとても重要だと思っています
最近では日本の建築における伝統的な空間操作法が 現代のサステナブルデザインのプロトタイプとして 改めてその価値を見出されています
これは 単に意匠的な要素の模倣ではなく 自然の摂理と調和した環境共生住宅の概念が 私たちの生活に不可欠なものとして再認識された結果と言えるからです
自然の力を利用する和の建築
自然光を読み解くパッシブデザイン
自然光を最大限に活用するパッシブデザインは環境共生住宅の核心です 夏の強い日差しは深い庇やルーバーによって適切に遮蔽され室内に熱を取り込むことなく柔らかな光だけを届けます
これにより冷房に頼らない涼しい環境が生まれます 一方で冬の低い日差しは大開口の窓から積極的に室内に引き込み室内を暖めます
(古日本建築)
(KADeL 建築作品 2017竣工)
日本建築の通風と換気の巧みな操作
重力換気や風力を利用した通風経路の確保は 電力に依存しない自然な換気を可能にします これは 単に空気を入れ替えるだけでなく 熱や湿気を排出し 空間全体を健全な状態に保つための 先人の知恵が詰まった手法です
これらの要素は 現代の建築に求められる「持続可能性」という命題に対し 技術ではなく知恵で応える 本質的なアプローチです
日本家屋の持つ 自然との対話を通じて形成された空間操作法は 未来の建築のあり方を考える上で 極めて重要なヒントを与えてくれると思っています
自然光
和の要素にとって光は単なる照明ではなく空間を構成する最も重要な素材の一つです 私の好きな言葉「陰翳礼讃 」にも通じます 環境共生住宅における光の設計はその本質を突き詰め自然の光と対話しそれを巧みに操ることを意味します
空間に物語を紡ぐ光
光はただ明るさをもたらすだけではありません 吹き抜けや高窓から降り注ぐ光は空間に開放感と広がりを与え 格子や障子を通した光は時間の経過とともに表情を変え空間に豊かな陰影と奥行きを創造します
これらは季節や時刻によって異なる光の「表情」を楽しみ自然のリズムに寄り添った生活を送るための重要な要素です
このように環境共生住宅における光の設計はエネルギー効率を追求するだけでなく人々の感性に訴えかけ空間に生命を吹き込む建築家の詩的な表現でもあると思っています
KADeLでは約30年前から環境共生住宅の設計に取り組み たくさんの傑作品を生み出しています
環境共生住宅「土壁の家」 / KADeL作品 4賞受賞
住宅設計において エアコンに頼らない暮らしとは 和の精神性に基づき 自然と共生するあり方を再構築することです それは 単なる機能的な解決策ではなく 住まい手の感性と深く結びつく 侘び寂びにも通じる繊細な美意識の表現でもあります
私たちは 人工的な冷暖房に過度に依存するのではなく 自然の「空気」の流れを読み解き それを住まいの隅々まで通すことで 心地よい空間を創出します 深い軒が夏の強い陽射しを遮り 庭の緑が涼を呼び込む これは 自然の力を借りて環境をコントロールするという 古来からの知恵です
また 障子や襖が光と風を柔らかく調節し 季節の移ろいを肌で感じさせてくれる こうした仕掛けは エネルギーを消費するのではなく 自然の恵みを享受し その変化を受け入れることで 豊かな暮らしが育まれるという 和の解釈そのものです
エアコンに頼らない住まいは 自然と対話し その恩恵に感謝しながら生きる 心豊かな暮らしの実現を意味すると思っています
私自身 正直なところ 近年の夏の猛暑日 パッシブデザインだけで室内の快適性を維持することは もはや現実的ではありません しかし だからといってエアコンのスイッチをただ入れるだけでは 本来の豊かさを失ってしまいます
私たちKADeLが目指すのは 「エアコンに頼らない暮らし」ではなく 「エアコンの力を最小限に抑える暮らし」 です
深い庇や風の道といった日本の伝統的な知恵は 夏の陽射しと熱気を効果的に制御します これにより エアコンは 冷えすぎた空間を作り出すためのものではなく 「ここぞ」という時だけ 少しの力で空間の快適性をアシストするための存在へと変わります
これは 自然とテクノロジーの双方が 住まい手のライフスタイルに寄り添い 賢く協調する新しい建築のあり方です 自然の恩恵を最大限に享受しつつ 現代のテクノロジーがもたらす快適性を必要な時にだけ享受する
このハイブリッドなアプローチこそが これからの環境共生住宅の新たな定義であり 住まい手の心身に真の豊かさをもたらすものだと思います
もうすぐ秋です
昭和3年に建築家の藤井厚二氏によって建てられた 日本最初の環境共生住宅 聴竹居の 2回目の訪問を計画しております 前回は夏に訪問したので 今回は紅葉の季節を選びました 今から楽しみです
今回は 私なりの「和」をテーマにお話しました
いかがだったでしょうか?
お家づくりの参考になりましたら幸いです
お付き合いいただき ありがとうございました
次回は 日本の中間領域「縁側を使ってみた正直な感想 ぶっちゃけどうなん!」をテーマにお話しします
建築ってほんとに良いものですね
それでは皆様 次回ブログでお会いしましょう
KADeL 黒瀬信幸(副社長/建築家)
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