皆様、こんにちは。KADeLの黒瀬です。
私が設計において最も大切にしている概念の一つに、室内における「引き算の美学」に基づいたマイナス設計論があります。注文住宅の打ち合わせでは、理想を求めてつい「足し算」をしてしまいがちですが、実はその一つひとつが、10年後、20年後の自分たちへの「請求書」となっている事実に目を向けなければなりません。

想像の階段(黒瀬)
今回は、建築家の視点から「本当に必要なもの」を見極めるための5つのテーマをお話しします。
1.トイレは一箇所で十分ではないか
3〜4人家族であれば、効率の良い場所に一箇所あれば事足ります。二箇所にすることで増えるのは、数十万円の設置コストだけではありません。日々の掃除の手間、掃除用具の収納、そして10年、20年周期でやってくる交換・メンテナンス費用もすべて2倍になります。
「おしゃれなカフェでも50席でトイレ二箇所」という事実を一度冷静に考えてみてはいかがでしょうか。
2.溢れる「機械類」を見直す
浴室乾燥機、ミストサウナ、全館空調、床暖房……。現代の住宅には便利な機械が溢れています。しかし、機械には必ず寿命があり、定期的なメンテナンスと多額の交換費用が伴います。その利便性が、将来の家計を圧迫するリスクを上回るものか。立ち止まって考える勇気が必要です。
3.今ある荷物の「超断捨離」
間取りを検討する際、最も効果的なのは現在の荷物の整理です。一年使わなかったものは潔く手放す。私自身も家具や私物を極限まで絞り込み、現在は最小限の持ち物で暮らしています。荷物を減らせば、収納スペースを削り、その分ゆとりある快適な空間を低コストで実現できます。
4.照明器具の選定と数
建築の美しさを際立たせるのは、目立たない簡素な照明です。華美な器具を増やしすぎると、空間が煩雑になるだけでなく、将来のLED器具交換時に想定外のコストが発生します。本当にそこに必要な光か。掃除の手間まで含めた検討が、美しい住まいを維持する鍵となります。
5.間取りの適正サイズを知る
「少しでも広く、部屋数を多く」という願いは、子供が成長した後の10年前後で「空き部屋」という課題に変わります。個室を極小にする、あるいは将来的に主寝室を拡張できるような「可変性」を持たせる。老後に管理しきれない無駄な空間を作らないことが、生涯にわたる心地よさにつながります。
結びに:不自由こそが、本当の自由
便利さや広さを追い求めることは、時としてメンテナンスやコストという制約に縛られることを意味します。あえて余分なものを削ぎ落とした先にこそ、真に自由で贅沢な暮らしが待っているのではないでしょうか。
今回の「マイナス設計論」が、皆様の家づくりの一助となれば幸いです。
次回は、少し視点を変えて「住宅の鬼門」についてお話ししたいと思います。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
建築ってほんとに良いものですね
それでは皆様 次回ブログでお会いしましょう!
KADeL 黒瀬信幸(副社長/建築家)
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