私は設計士です。
図面を描く事は私の主な仕事のひとつです。
今回は一枚の設計図面がどのようにして出来上がるかをご紹介します。
ヒアリング
図面を描く前には、計画地を確認した上で依頼者様にヒアリングを実施します。
家族構成はもちろん、趣味、好きな物・嫌いな物、今のお住まいの不満な所や満足している所、お家を建てる理由、どのような家に住みたいか、新しく創る家でどのような暮らしがしたいか、家族や家族以外とどのようにかかわりたいか等々とにかく色々な事をお聞きします。
時には設計には関係なさそうな事を聞くこともありますが、実はそのすべてが設計のヒントになっています。
ヒアリングが終わると、間取りや空間を具体的なカタチにするために設計図面の検討に入ります。
道具
図面検討には紙と鉛筆と三角スケール。これがないと始まりません。
主には方眼紙に描きますが、白い紙、裏紙などに描くこともあります。
学生の頃設計を教えていただいた建築家の先生に、「方眼紙はマス目があるが故に自由な発想が削がれるからなるべく使わない方がいいよ」と教えていただきましたが、マス目がある事で寸法、面積、法規制など正確にチェックできるので重宝しています。
それ以外は先生の教えに従いマス目はない事として描くようにしています。
そして鉛筆です。私は2Bの鉛筆を使っています。シャープペンシルは使いません。2Bの鉛筆の描き心地が気に入っています。
7年ほど前に長女が小学校を卒業するときに、学校から大量にもらってきたネーム入りの鉛筆です。次女と長男の分もあるので、一生鉛筆には困らないような気がします。
ピンピンに尖った鉛筆は描きにくいので先端は程々にして描きます。
描いたものを消すときには消しゴムです。いつもはMONO消しゴムを使っているのですが、今はMONO消しゴムを切らした時にたまたま引出しにあった消しゴムを使っています。
包み紙をとってしまったのでメーカーは覚えていないのですが、これはこれで良く消えます。が、消しカスの感じが好みでないので早く使い切ってMONOに戻りたいと思っています。
とにかく描く
依頼者様のご希望をとにかく描いてみます。良いイメージに近づくまで描いてみて、やっと空間のイメージがまとまってきました。描いては消し、消しては描きの繰り返しです。
1枚目で良い感じになる時もあれば10枚描いても思い通りにならない時もあります。図面を描きながら必要な情報も書き込んで空間を整理していきます。
検討初期の段階から周辺環境や法規制含めた建物ボリュームはもちろん、ファサードや内部空間等も立体的に捉えながら検討を進めていきます。
コストもある程度想定しながら描いているので、ここまでくると頭の中では完成が見えてきています。ワクワクする瞬間です。
ここからさらに練っていき空間意匠やディテール、面積関係、コストを含めた調整をしていきます。
ひたすら練る
さらに練っていきます。今回の設計ポイントにもなっているお庭の見せ方や使い勝手もまとまってきました。
この段階で少しでも気になる事があればイチから描き直します。気になる事を放置して微調整だけをしても良い図面にはなりません。一旦諦めて気持ちを切り替えて新しい検討を始めることも大事です。よくある事です。
今回は納得のいくカタチになりましたので、パッシブデザインも考量しながらさらに検討を進めていきます。ここからは練れば練っただけ良い空間になっていくので、空間の必然性と精度をひたすら上げていきます。
まだ早いかもしれませんが、この段階で依頼者様の想いや夢が詰まった良い図面ができた事を実感して、心地良い達成感に包まれています。
積算
完成した手描き図面をもとに建物本体価格の積算をしていきます。どこまでが標準仕様で対応できるか、オプション工事はどうなるか等を踏まえて、建物本体価格を計算していきます。
以前設計部にいたスタッフから譲り受けた電卓です。10年くらい使っていますがまだまだバリバリ正確に計算してくれます。一生使えそうです。
ずっと使っているので電卓を見なくても計算ができます。ブラインドタッチです。でも押し間違っていると大変なので、チェックのため電卓を見ながら再計算もしています。壊れない事を祈りながら毎日キーをたたいています。
CAD入力、模型製作
手描きの図面が完成するとCADオペレーターさんによるCAD入力へと進みます。プレゼンテーション用の資料作製としてはここからが本番かもしれません。
この段階では、PC画面や出力した紙を見ながら色味や質感、アングル等の調整を行います。
CAD入力はPCを使って私の頭の中にある、そして依頼者様がご希望されている空間をカタチにする、とても繊細でセンスのいる業務です。CADオペレーターさんはCAD入力だけではなく模型製作も担ってくれています。凄いです。
これらを経て晴れて依頼者様へのプレゼンテーションの日を迎えることができます。
依頼者様にはきっと喜んでいただけるご提案ができると思います。
プレゼンテーションの日が楽しみです。
ではまた。
KADeL 西尾真一
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