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【住宅の豆知識】プレカットのお話
公開日
2024-5-28 09:00

~プレカットとは~

「プレカット」という言葉はご存じでしょうか。

家づくりの過程では、聞き慣れない専門用語がたくさん出てくると思いますが

今回は「プレカット」をテーマにお話ししたいと思います。

プレカットとは、「PRE(予め)」「CUT(切る)」を併せた造語で、

木材を現場ではなく工場で事前に切断・加工して現場に持ち込む建築方法のことを言います。

 

 

 

~プレカット技術ができるまで~

皆さん上棟作業を見かけたことはあるでしょうか。

大きなレッカー車で材木を吊り上げて、大勢の大工さんが作業をしていて、

朝は何もなかったはずなのに夕方になったら家の形ができていた。

あれが上棟(じょうとう)です。あっと言う間に家の姿が出来あがるのには、実は訳が有ります。

予め材料を加工しておいて、現場で組み立てをおこなうだけにしておくのです。

 

 

 

プレカット技術が普及するまでは、その準備を大工さんがおこなっていました。

手板に図面を引き、それに従って木材の1本1本に墨付けをした後、

カンナやノミをつかって複雑な「継手」や「仕口」の刻みをおこなう。

その準備に非常に手間と時間が掛かりました。

 

 

 

~プレカット技術の普及~

今その準備は専門の工場がおこなっています。それを「プレカット」と言います。

プレカットでは、コンピューターに入力したデータをもとに

木材の長さ・幅・高さ・継手(部材をつなぐ接合部分)・仕口(方向が異なる部材の接合部分)等を

正確に加工していきます。継手は真っ直ぐに木材を縦につなぎ、仕口は2本の木材を直角または角度がある状態でつなぎます。

プレカット加工では、設計図面データを専門の技師がCADソフトにデータ化し、

機械に完成データを転送した後に一つ一つの木材を正しく加工します。

さらにプレカット加工済みの木材には番号が振られ、品質検査をクリアしたものだけが現場に出荷されます。

 

 

 

プレカット技術が導入されて以降、木造住宅建築の世界は大きく変わりました。

大工さんの経験や目利きに頼って書かれていた手板の図面は計算に裏打ちされた構造設計図となり、

ノミで刻んでいた加工はコンピューターの自動制御になりました。

予め機械を使い高精度で加工された木材を建築現場に納めることができます。

かつて大工さんの腕に頼り切っていた品質が、すべての建物にもれなくお届けできるようになったのです。

 

 

~プレカットのメリット・デメリット~

プレカット技術の導入には、施主のみでなく施工側にも該当する多くのメリットもあります。

しかしながらデメリットもありますので、両者を見極めながら良いお家づくりをしていくことが大事です。

 

■プレカットのメリット

①工期が短縮できる

プレカット加工により加工済み木材が現場に運ばれてくるので、

事前準備として大工が現場で木材を加工する手間が省け、住宅引き渡しまでの期間が短くなる。

②コストが削減できる

プレカットによる工期短縮と比例して必要な人件費も抑えられます。

プレカット工場での加工にもコストはかかりますが、大工の手作業に比べると費用を抑えながら木材を加工する事が可能です。

③現場のごみを減らせる

現場で木材を加工すると、非常に多くの材料ロス(廃材・ゴミ)が出てしまいます。

工事現場で発生した廃材は産業廃棄物に該当し、許可業者が専用の処理施設で処分しなければいけません。

プレカットでは材料ロスを極力出さないように加工するため、資材削減によるコストダウン効果も得られます。

④大工の腕に住宅の品質が左右されない

木材の加工には大工の非常に高い技術が求められます。大工の腕で住宅の品質が大きく左右されてしまいます。

しかしながらプレカットであれば構造躯体の構築に大工の腕は関係なく、検査済みの高品質な木材が使用できます。

上棟時の作業は主に加工された木材の組み立てになるので、大工の腕によらず安定した高品質な構造躯体を組み上げる事ができます。

⑤加工精度が高く品質が安定している

プレカット工場では高い精度で木材の加工が可能です。

さらにプレカット加工された木材は工場で適切な品質チェックを済ませた上で出荷されるため、

住宅の構造部分に重大な欠陥が発生する問題を予防することができます。

工場で加工された柱や梁などは高品質で一本一本強度を確認することができるため、

高精度な構造計算を行うことが可能になり、ミリ単位の精度でプレカット加工された資材は

品質のバラつきや加工ミスも無いため、現場での施工精度が向上します。

 

■プレカットのデメリット

プレカットには当然のことながらいくつかのデメリットも存在します。

①木材の特色が活かしづらい

木材は生き物と言われるほど、それぞれの木が個性を持っています。

高い技術力を持つ大工は木材の個性を理解した上で活かすことができます。

しかしプレカットでは木が本来持っている意匠上の個性は考慮されず、一つの材料(構造材)として加工が進められます。

意匠上木材の特色を活かした加工をしたい場合は、腕の良い大工に依頼する必要があります。

②複雑な加工ができない

プレカット加工には限界があり複雑な加工ができない場合があります。

プレカット技術も日々進化はしているのですが、実際には大工にしかできない加工も存在します。

今後技術が発展する事によって複雑なプレカット加工ができる日も来ると思います。

③大工技術が継承されなくなる

プレカットにより大工の技術が求められない現場が増えると、技術を受け継ぐ者が育たたず大工技術が伝承されません。

大工に限らず現在多くの専門職が減少傾向にあり、機械で再現できない技術が失われることがあるという側面もあります。

 

 

 

~最後に~

今回は「プレカット」についてお話ししましたが、プレカットで加工される「継手」や「仕口」にも

いろいろな形状や種類があり、場所や用途によって様々に使い分けられているのですが、

これについてはまた別の機会でご紹介したいと思います。

 

KADeL 西尾真一

関西 大阪 注文住宅 建築設計