<設計者コメント>
平坦な地勢の住宅地にあり、ご主人は趣味である車をたくさん駐車できて、ご夫妻の3匹の愛猫とゆったり楽に暮らすことのできる、こだわりの詰まったお家です。
インテリアは奥様が主導され、とてもシンプルに、木が効いた空間になっています。
床は珍しいモルタル塗りで仕上げていて、空間全体にひんやりとした質感にすることで、デザイナー家具や照明がアクセントとして引き立っています。
中庭との境界である壁をすべてガラス張りにして、床ピッタリ・天井ピッタリに仕上げています。天井は内部から外部へ迫り出したような構造で、ガラス建具が壁の代わりに天井を支えているように見せることで、とても軽やかに映っています。外部へと迫り出したような天井は、夏の暑さを和らげる庇として、また雨避けとしても機能する重宝な構造物です。電気やガスを使わないためエナジーフリーでメンテナンスフリー。とても優れた働き者です。
意匠面での面白い試みとしては、何箇所か斜辺を挿入していることです。平面図で見ると顕著に面白さが感じられますが、玄関・ホールからキッチンまで続く「斜めの線」を創って、壁・床・天井で連続させる、という表現をしています。(施主様には大いに気に入って頂けましたので、訪問者の方にはそっとご説明して下さると期待しています。)他にも立体的な「斜め」をいくつか組み込んで変化を楽しめるようにしています。その他にもひと工夫あります。プライバシーを守る独立壁を、建物本体からほんの15センチ切り離してスキマをつくり、「間」を取っています。屋内から見ると「光の筋」が中庭へと差し込んでアートな雰囲気になり、夜、道路を行き交う人から見ると、温かな光が外へと漏れ出して、とても大きなライン照明のようになり、「街灯」として町の人にも楽しんでもらえる仕掛けとなっています。
家事動線へのこだわりも形にできていて、ひとつ目は、「冷蔵庫や食器棚などを見せない」工夫。ふたつ目は、ランドリーを少し広めに作って室内干しや収納ができること。そのためにランドリーの外へと持ち出されることになった洗面化粧台は、かえって明るく開放的なホールに配置することになり、シンプルさを追求した設えを存分に楽しんで頂けたという感想です。
とてもお行儀の良い3匹の猫達はそれぞれ自由で好きな居場所を季節や時間でいくつも移動しながら、空間に安らぎを与えてくれているようでした。