失敗しないマイホーム
公開日2026.03.12

住宅ライター / プロインタビュアー
大内 夏実
「建築家と建てる家」にどんなイメージをお持ちですか?
個性的でおしゃれ、デザインに凝っているというポジティブなイメージや、住みづらい、コストがかかるなどネガティブなイメージもあると思います。
そこで、建築家の役割とハウスメーカーが建てる家との違いや、家を建てる側の知りたいことだけでなく、実際に建築家にインタビューし、建築家が重視していること、知っておいてほしいことなどについてもお聞きしました。イメージだけではない、リアルな「建築家と建てる家」を深堀りしていきます。
建築家とは建築に関する専門知識を持ち、建築のデザイン、設計、監理の他にも建築にまつわるあらゆる業務を専門的に担う職業のことです。
建築家とよく似た言葉に「建築士」「設計士」が挙げられます。「建築士」は一級建築士や二級建築士のように国家資格を有している方。「設計士」は設計業務に関わる仕事をしている方で、国家資格は必要ありません。
実は、建築家も資格は必要ありません。画家や音楽家と同じような考え方と伝えるとわかりやすいでしょうか。しかしながら、建築家の多くの方が国家資格を有しています。
わかりやすく例えると、
建築家=建築のコンセプトやデザインを重視する、アーティスト的な役割
建築士=法律に基づき設計や管理を行う専門家
設計士=設計に関するエンジニア
というところでしょう。
工務店やハウスメーカーが建てる家に比べて、建築家と建てる家には縛りがありません。住宅としてできる範囲であれば、どんな希望でも叶えてもらえるでしょう。後に施工例を紹介しますが、細かくオーダーをしなくても、漠然とした希望を伝えると「思った通りの仕上がり」ではなく、「思っている以上の仕上がり」になる場合が多いでしょう。また、できないと思っていることも可能にしてしまうのが建築家。シロウトには想像もつかないアイディアで憧れをカタチにしてくれます。
▲ 好きな時に好きなことをして過ごせるようにというコンセプトで設計 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(移ろう家)
家全体の隅々まで統一感があり、デザイン性が高い住宅が建築できます。建築家はこだわりが強い方が多いので、家のコンセプトやテーマ、デザインの方向性に合わせて隅々までチェックし、気になる点があれば工事中であっても変更を加えてトータルの美しさを表現します。
▲ 直線と曲線が織りなす個性的なデザインの外観 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(移ろう家)
狭小地や変形地でも建築家のアイディア次第で広く暮らせることができますし、憧れていた間取りも叶えることができます。むしろ、変形地の特性を活かした設計でデメリットをメリットに変えてしまうことも可能でしょう。
▲ 敷地20坪に満たない家でも光と開放感があふれる設計 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(愉しむ家)
建築家に支払う費用が別途発生するために、工務店やハウスメーカーに比べて総額がアップする場合があります。また、工務店やハウスメーカーのように規格化されていないので、使用する資材や部材をひとつひとつ調達するためにコストがかかる場合があります。
こちらも工務店やハウスメーカーのように規格化されていないので、比べると設計・建築ともに時間が必要になります。いつまでに建築しなければいけないという期限が決まっている方は要注意です。
建築家によっては自身が持つ世界観が強い方もいます。住宅を「作品」ととらえ、こだわり抜く方が多いので造形美がある家を建築されますが、反面意見を聞き入れてもらえなかったり、建築家の意見を強く押されたりするなどぶつかることも。
依頼する前にしっかり話し合って、コミュニケーションが取りやすい人かどうかを確認する必要があります。
建築家は何を重視して提案したり、設計したりしているのでしょうか?また、どんな方が建築家と家を建てることに向いているのでしょう?気になる疑問を実際の建築家にインタビューしました。また、建てる側の知りたいことだけでなく、建築家からも知っておいてほしいことなどもお聞きしました。
建築設計事務所 株式会社KADeL
本社所長/一級建築士 西尾真一さん
建築士歴20年を超える西尾さんは、住宅建築の賞を受賞するなど実績・経験ともに豊富な一級建築士。様々な質問に率直にお答えいただきました。
──家を建築する際に、一番重視する点は?
西尾さん「住む人の視点を重視しています。あるご家族から依頼されライフスタイルやご希望をヒアリングしたら、夫目線になり、妻目線になり、子ども目線になってどんな家が楽しいかを想像します。夫になりきったり、妻になりきったり。憑依型とでもいいましょうか(笑)」
──建築家が建てる家は動線や収納スペースを気にせず暮らしづらいというようなこともよく聞きますが?
西尾さん「住む人目線で考えるので、生活動線を重視する方だったら徹底的にこだわりますし、家事をあまりしないという方だったら家事動線はこだわりません。収納も少なくていい方なら最低限にしますし、逆に狭小地でも趣味のものなど収納スペースがたくさんほしい方には収納したいものに合わせてスペースを多く取ることもします。あくまで住む人目線なので、住む人にあった家を建築します。」
──工務店やハウスメーカーが建てる家と異なり、建築家が建てる家の特徴はどんなところですか?
西尾さん「まずは縛りがないということ。制限もないし、なんでもできます。また、住みにくくても、居心地のいい家ってありますよね。住みにくい=悪ではないのです。家全体がすべて平均点の家ではなく、30点のところもあれば200点のところもある。それが建築家が建てる家の特徴かもしれません。」
──設計する際には風水や鬼門の方角などを考えているのですか?
西尾さん「私の場合は一切考えません。鬼門は気にされる方の場合は考えますが、風水を気にする方は実際にお会いしたことはありませんね。建築家と家を建てたいという方で風水を気にする慎重派の方が少ないのかもしれません。私の体感ですが(笑)」
──どんな方が建築家と建てる家に向いていますか?
西尾さん「やはり一番は建築が好きな方ですね。インテリアが好きで、空間が好きな方。建築雑誌とかを見て楽しめる方。普通の家では満足できない、何かひとつ特徴のある家を建てようと考えている方ですかね。オーソドックスがいい、平均的な家がいい、コスト重視という方は向いていないかもしれません。」
──では、建築家にオーダーする際はどんなことを伝えたらいいですか?
西尾さん「家族の基本情報は伝えてください。どんな暮らし方がしたいか、漠然とでいいので思ったことを話していただけるといいですね。そのヒアリング内容をもとに建築家はアイディアをふくらませ、プロの視点でご提案しますので、あまり細かくオーダーはしない方がいいかもしれません。建築家のアイディアの幅をせばめ、建築家に頼むメリットを感じられなくなってしまいます。間取りはコレ、床の張り方はコレなど細かく決めている方は建築家にオーダーするより言った通りに建ててもらえる会社に頼んだ方がうまくいくような気がします。」
▲ 意匠性が高い玄関のベンチ。どこをとってもひと味ちがうデザインに 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(R.O.V.O)
──ありがとうございました。
建築設計事務所 株式会社KADeLさんが手掛けた住宅の施工例をご紹介します。
▲ 家の中でも自然を感じる潤いがある設計 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(木と共生する家)
「家の中に緑がある家っていいですよね」というお施主様の一言からはじまった「木と共生する家」。玄関を入ってまず目に飛び込むのが家の中に植樹した大きな木です。LDKは2階。木を眺めながら階段をのぼったり、階段から木に霧吹きで水をかけたり。ナチュラルな暮らしを実現した大胆な設計の家です。
▲ 1階はグランドピアノがあるコンサートホール。螺旋階段は観客席に見立てました 建築設計事務所 株式会社KADeL施工例「愉しむ家」
「他にはない、独創的な家にしたい」というお施主様の願いを叶えました。1階のガレージの奥はグランドピアノがあるコンサートホール、2階には中庭もあり、遊び心があふれる家です。また、子ども部屋の床は一部ハンモックに。敷地約19坪という狭小地でありながら、光にあふれ、家族が愉しめる家になりました。
▲ 3階の子ども室の床は、一部がハンモックに! 2階に自然光を届ける役割も担っています 建築設計事務所 株式会社KADeL施工例「愉しむ家」
▲ ガラス張りのバスルームがリビングから眺められる家 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(リビングバスの家)
バスタブを眺めたい、葉巻を楽しむ空間が欲しい、お酒と料理を楽しむスペースが欲しいなど、お施主様のライフスタイルに必要なモノだけを抽出して建築された家。バスタブを使うのは年に数回だけで隣のシャワールームを使うとか。それでもバスタブがインテリアの代わりになったリビングはまさに唯一無二です。
▲ お施主様の世界観が詰まったスタイル 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(リビングバスの家)
建築家へ依頼することを家づくりの選択肢に入れた際、「紹介してもらったから」とか「名前を聞いたことがあるから」という理由で建築家を選ばず、必ず施工例をチェックするようにしましょう。
建築家は自分の持っている世界観が強い方が多いです。デザイン・空間にある種、独自のテイストや路線があり、それはその建築家の施工例を見れば感覚的にわかります。
そのテイストや路線が気に入った場合はその建築家にオーダーすると大満足すると思いますが、その施工例に魅力を感じなかった場合はやめておいた方がいいでしょう。
極端な例で言うと、シンプルでホテルライクな近代的なテイストが好みなのに、施工例が和モダンな日本建築風だと、双方納得がいかない結果になる場合が往々にしてあります。
後悔しないためにも、好みのイメージが共有でき、独自のアイディアから理想の住まいを叶えてくれる建築家を探しましょう。
▲ ロボットをイメージした外観デザイン。建築家とイメージの共有ができてこそ、納得の家が建築できます 建築設計事務所 株式会社KADeL 施工例(R.O.V.O)
家を建てた方に「一番こだわったところはどこですか?」とインタビューすると、「家事動線にこだわった」「収納にこだわった」という方は多いです。しかし、数は少ないけれど「おもしろい家」「普通じゃない家」という個性的な考えを持った方もいます。
前者の方は建築家の費用を支払って家を建てるのはもったいないかもしれません。なぜなら、ハウスメーカーや工務店もそのようなノウハウはたくさん持っています。しかし、唯一無二や大胆な設計をしたい方はぜひ建築家に相談を!
筆者は建築家と建てた家に入った瞬間、空気感がちがうというか「あ、ちがう」と感じます。思っている以上に建築家はアイディアにあふれていて、想像のはるか上を行く住まいを建てることができるかもしれません。
受賞歴も多数ある経験豊富な建築デザイナーが、洗練されたハイグレードな住まいを提案。暮らす人の快適性と建築物としての美しさを共存させた高い設計力が魅力。また、土地探しから資金計画、施工、アフターサービスまですべて自社で担当する一貫体制も特徴のひとつ。自然の恵みと寄り添いながら暮らす環境共生型のパッシブデザイン住宅は、モデルハウス「土壁の家」で体感できます。
▲ 心斎橋駅から徒歩1分にある心斎橋店
▲ モデルハウス「土壁の家」。見学希望はお問合せを
住宅ライター / プロインタビュアー
大内 夏実
株式会社リクルートで情報誌のイロハを学び、独立。不動産・住宅系ライターとして経験を積む。大手ハウスメーカーから小さな街の工務店までさまざまな建築会社の注文住宅施工例やモデルハウスなどを取材。実際に家を購入した方、建てた方のインタビューも多数実施。