皆さんこんにちは建築設計事務所 KADeL黒瀬でございます
今回は実際、私自身が「環境共生住宅/パッシブデザインの家に住んでみた素直な感想」をお話したいと思います
住み心地や 光熱費などのお話しを交えて進めてまいります
日本最初の環境共生住宅 「聴竹居」 この住宅は建築家の藤井厚二氏が昭和3年に建てられた現在に残る唯一の実験住宅 です
次々と実験住宅を立て自ら住まうという住まいの研究者であった藤井氏 聴竹居はその5棟目で この到達点である住宅には研究の結論が凝縮されています
私は20数年前に現地を訪れ その住宅に注ぐ情熱にとても感銘を受けました
地域性や周辺環境を読み解き 自然の摂理をエネルギーに変える設計手法 そして日本の四季折々の変化を大胆に取り込むデザイン そんな奥深くて上品な住宅建築を設計してみたいと言う思いで今もなお住宅作りに活かしています
KADeLの環境共生住宅は日本の様々な古建築(町屋 民家 屋敷 神社仏閣など)や近代建築から発想を得て 現代的な解釈をして古さと新しさが調和する木造モダニズム建築を提案しています
そんな KADeLの環境共生住宅に住んでみた感想をお伝えします
※今からお話しする住宅は 設備は給湯器(24号フルオート)のみをつけており その他の設備 太陽光や蓄電池 床暖房など一切設置をしていません 照明器具は全てLEDにしています
アクティブ(機械に頼る)ではなくパッシブ(自然に頼る)住宅として設計しています
それでは環境共生住宅/パッシブデザイン住宅を春夏秋冬で解説していきたいと思います
パッシブデザインとは
自然の力を活用して快適な住環境をつくる設計手法
太陽の光や熱 風などの自然エネルギーを効率的に利用することで 省エネや地球環境への負荷の軽減を図ることができます。
秋:
残暑も終わりかけた頃 朝晩が冷え込む季節です 我が家では昼間は一階と二階の窓を開けて 偏西風の影響を受けた西風を取り込む風力換気と暖かい空気と冷たい空気の性質を利用した重力換気を行いながら 温度調整をしております 日中は秋晴れが多く太陽の日射角も夏に比べるとずいぶん低く落ち着いてきて 大きな土庇のある南側の窓から直射日光が部屋の奥まで差し込み床を温めます 天然の床暖房といったところでしょうか 秋晴れも重なって得した気分です
天然の無垢の床が人肌以上に温まり床の輻射熱で部屋全体へ心地よく温度を上げてくれます 朝 晩は 冷え込むので窓を締め切って Tシャツの上に一枚羽織り生活しております 照明も黄昏時に仄かに灯す程度で 夕食の時間までは仄暗い雰囲気の心地よい明るさで 道の駅で購入した鈴虫の羽音を聴きながらリラックスしております 開口部が大きい割には しっかり断熱がされており思った以上に室内が暖かく快適です
この時期は電気代やガス代も比較的低く我が家 (延床面積約50坪 夫婦 子2人)では ガス代 約3000円 電気 約7000円程度で生活しております
この時期は 大きな開口部から庭を望むと 毎日メジロのつがいが遊びに来てくれます 静かな庭に動きが出て ついつい眺めてしまいます 庭の金木犀もこの時期 一瞬だけ 華やかな香りを楽しましてくれます
縁側の先のガマズミも紅葉し始めて 秋を感じる季節です
冬:
冬に差し掛かると我が家でも暖房器具を出す時期となります
南に大きく張り出した土庇の方から 冬至の頃には太陽の日射角が低く約30度になっており 部屋の奥の奥の方まで 直射日光が差し込みます
直射日光で温められた床は人肌以上に暖かく 浮作りになった無垢の床は素足と床の間に空気の層となり足裏の皮膚の床への接触面を減らし 無垢の床の熱伝導率の低さと相まって 足裏の熱を奪うことなく 暖かく とても優しく快適です 当然 無垢の床なので床暖房は設置していません でも 冬の直射日光と無垢の床の快適さが 心地良い天然の床暖房となっています
晴れた日は暖房器具無しでも十分室内全体が暖かく快適です
しかし、この天然の床暖房も 日が沈んでしまうと全く効果を失ってしまいます あと雨の日も効果がありません 晴れた日の特別な自然の恵みといったところです
大阪は冬晴れの日が多く 特に12月が1年で1番晴れの日が多いと言うデータがあります 平均すると約75%以上が晴れの日になります
天然の床暖房が 使い放題となっています 電気もガスもお湯も 使いません
そんな天然の床暖房に加えて 我が家の暖房は1つだけ 対流型ストーブ(灯油)のみです リビングにぽつんと置いてあります
個人的に悩んだ憧れの薪ストーブも良いですが 灯油ストーブは薪ストーブに比べて手間もかからず 部屋も汚しません 火力も十分です インテリアとしても家具との相性も良く溶け込みます
性能的には確か木造16畳用だったと思います その一機で50坪2階建て(木造)が全て暖まります 対流型なので 家全体が暖まり 数時間つけておくだけで リビングの床 壁 天井など全体が蓄熱体となり 家の断熱性能と合わせて2階まで暖かく ストーブを消化した後も暖かさが数時間持続されます
それと並行して当社の標準装備の「冬のエコエア」で2階にたまった熱気を1階へ断熱パイプファンで吸い出し戻してやり 暖房効率のロスを抑え 家全体を均一に暖かくしてくれる空気循環システムのおかげで とても快適です
気になる灯油代ですが我が家では月に14000円から18000円といったところです それ以外の暖房器具は無いので電気代とガス代も抑えられとても経済的です
この季節の電気代は8000円台 ガス代は5000円台まで上がります
対流型石油ストーブの上部は平たくなっており そこに水を入れたやかんをおけば加湿器になり それからお鍋などを置いて煮込み調理ができます ガス代もかからず一石二鳥です
災害時にはストーブ自体が暖房器具兼 調理器具兼 照明器具になり とても重宝します
その頃には庭のサザンカがたくさんの大きな白い花を咲かせます 家族の目のご馳走となります
春
春に差し掛かるとストーブも役目を終え納戸にしまわれます 幸い我が家には重度の花粉症のものがおらず 1階と2階の窓を開け放ち 重力換気と風力換気を行いながら温度調整をしています
庭に開かれた大開口部から 春の訪れをリビングまで運んでくれます とても気持ちよく開放的で春の訪れを五感で感じます
庭に様々な野鳥が訪れ 愛らしい姿と鳴き声が室内にまで届いて楽しませてくれます 個人的にはシジュウカラやヤマガラ メジロ スズメが可愛くて好きです 今年はシジュウカラが巣を作り 雛を育てていました
庭に植った 様々な樹木が新芽を出し 活発に成長します 中にはきれいな花を咲かせてくれるものもあり 特にこの季節 庭の 琉球ツツジ さつき などが 満開になり 可愛い蜜蜂がやってきて 春の訪れを賑やかに飾ってくれます
春も秋同様 自然の摂理を利用してガス代も電気代もさほどかからず省エネな暮らしが可能です
夏
蝉の声 我が家の庭は毎年大量のクマゼミが発生します 朝起きると一つの木に10匹くらいとまっており 何本もある樹木から 一斉に鳴き始めます
夏の風物詩 夏が来たなと強烈に実感します
南側の大開口部 上部には大きな土庇(出幅約1500mm)のおかげで 夏の日射角70度の強い日差しを一切 室内に入れない様に工夫しています
それでも7月くらいになると環境共生住宅(パッシブデザイン)といえどもエアコンの使用頻度も少しずつ増えてきます 流石に使わないわけにはいきません 電気代の請求は月に15000円台まで上がります
それでも「エアコンに頼らない家」を実践しています
エアコンの設定温度は 標準または +0.5℃の 自動運転にしています 理由は自動運転が省エネと記事に書いてありました
8月くらいになると16,000円台まで上がりました
それくらいがピークで9月になると クーラーの使用頻度も下がり電気代の請求は11,000円台まで下がります
皆さんの住まいと比べてみていかがでしょうか?
延床面積51坪 4人暮らしにしては 良い結果だと思っています
ガス代については相変わらず3000円台をキープしております
それと合わせて当社の標準の空気循環システム「夏のエコエア」をこの頃に作動させています
冬に冷やされた1階床下基礎部分の地熱 約20度から25度程度の冷気を2階の屋根の下部の小屋裏に断熱パイプファンで持ち上げて 直射日光で熱せられた屋根の下の小屋裏にある70度から90度位の熱を外部に排出し小屋裏の温度を少し下げようとする仕掛けです そうすることによって 2階の天井からの輻射熱を少し抑え 寝室や子供部屋を快適にしようと考えています
我が家でも温度計を設置して実験をしながら過ごしているのですが 劇的な効果があるわけでは無いですが 小さな電力でほど良い効果があるように思っています
最近になって気づいたのですが 「冬のエコエア」と併用するとさらに 2階が涼しくなることを発見しました 2階部屋部分(ホール)にどうしても溜まる夏の熱気を吸い込み1階のエアコンを付近のリビングに排出することでで 2階の温度を数度下げ 1階と2階の温度差を近づけることが可能となり快適になります
以上 春夏秋冬 いかがだったでしょうか
次は環境共生住宅/パッシブデザインのメリットとデメリットを さっとご紹介しています
【メリット】
②夏と冬の太陽の日射角を利用しているので夏涼しくて冬暖かい 春と秋は 自然換気(重力 風力換気)で心地良い
※第三種換気も作動しています
③庭とLDKが大きく接続されているので四季や時間の移ろいが心地よく 癒される
④大きな土庇がある縁側に雨風を凌ぎに猫が遊びに来る 多い時は5匹ぐらい集まって 私たち家族はその子たちをアベンジャーズと呼んでいた
そのうちの1人がこの子
この子の事はベージュなのでべーやんと呼んでいた いかつい目をしているが 鳴き声は可愛くて人懐こい 飯はしっかり2人前食べる そのあと どこかへ消えて行く
⑤風力換気や重力換気で室内に生活臭がこもらない (花粉症の方は設計段階で工夫が必要)
⑥主な住宅設備として給湯器以外つけていないのでイニシャルコストやランニングコストやメンテナンスや将来的な交換のコストなどが発生しないのでとても経済的 機械の不具合等の煩わしさが無く 精神的にも気楽 何もないことはいいことだ と思っています シンプルが1番
⑦ 敷地の特性や周辺環境などを考慮に入れながら開口部計画しているので プライバシーがしっかり守られ それでいて明るい 直射日光ばかりに頼らず 、天空光や間接光 なども利用しながら 快適で自然な光を取り込んでいる 黄昏時まで電気を点けたことがない
⑧庭とLDKを強く接続している設計計画のため天候や四季を感じられ家族とのコミュニケーションが増える そしてだんだん庭仕事が趣味になっていくのを感じる 健康や精神面にも良さそうだ 歳のせいか結構楽しい
【デメリット】
①風力換気や重力換気を行うので窓の開け閉めに手間がかかる 標準の窓ガラスはペアガラスで重たいので指詰めに注意 雨の日は 閉めざるをえない 自然に左右されてしまう
②庭に面している開口部が大きく 庭を綺麗に見たいので 窓の掃除が重要 我が家はワイパーで水を切って掃除をしている 慣れると簡単だが 正直少しめんどくさい でも体を動かすので健康的と言い聞かせて作業している
③開ける窓を考えて開けないと防犯性が落ちるので設計段階で考える必要がある 人が入りにくい位置や大きさのものを 数箇所用意しなければならない
ちなみに我が家は防犯合わせガラスを採用している
そして最近 強盗が増えているので 万が一の場合 ホームディフェンス として フラッシュライトや 棒を用意して準備している 家族を逃がすため 時間稼ぎに使用するつもりだ 「ここは俺に任せろ!」と言うつもりだ
最近は 玄関から宅配業と偽り 押し入るそうだ
もう 防ぎようがないので 家に侵入されたらホームディフェンスは必須になる
④開放感やお庭や借景の風景を切り取る為 大開口や大空間で設計するので性能を重視する方には設計段階でバランス調整が必要
⑤窓の数が多いので紫外線が室内に入り人間の皮膚や家具などが紫外線で日焼けする可能性があるので気になる方は設計段階で窓にUVカットフィルムなどを選ぶと良いかもしれない
特に 太陽光の日射角が低い 冬が室内に直射日光がたっぷり入るので気になる 逆に夏は気にならない
⑥パッシブデザイン住宅で省エネに暮らすには家族全体が省エネ意識を持たなければならない これがなかなか子供たちには難しい つけっぱなしの出し放題 やりたい放題となってしまう
でも 一般住宅でも同じかもしれない
省エネ意識が高いと 子供達から白い目で見られるので あまり子供達には言わない様にしている
もっとメリットやデメリットがあるかもしれないが細かすぎる内容になってしまうので今回はこれぐらいにしようと思います
※因みに我が家は電化製品に興味がないので 一般家庭より少ないように思います
最後に
私個人的には環境共生住宅/パッシブデザイン住宅はとても住みやすく心地よく快適だと思っています 自然の摂理を利用する昔ながらの生活の仕方 環境に優しく 心にも優しい リビングが大きく庭に接続され 開放的で四季を五感で感じ ゆっくりとした時間が心地よく つくづく我が家が世界で1番落ち着く極上の空間と思っています
これからもKADeLは お客様の最良の選択になるように美しく住みやすい環境共生住宅を作り続けていきます
今回も ご一読頂きありがとうございました
次回は「ここは俺に任せろ!」
防犯/ホームディフェンスについて」をご紹介 致します
建築ってほんとに良いものですね
それでは皆様 次回ブログでお会いしましょう
KADeL 黒瀬信幸
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